当院での糖尿病治療

べっぷ内科クリニックで
受けられる糖尿病の専門治療

血糖値が多いと死亡率が1.22倍高くなる!N Engl J Med.358:2545-2559,2008

糖尿病専門医が考える
「血糖管理の原理原則」のうちの
「②治療過程で低血糖を絶対に
起こさない」について。

糖尿病の治療は、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)という「血糖値の平均値」を基準に評価を行うのが一般的ですが、HbA1cは過去2-3か月の血糖値の平均を見ているという点が重要なポイントです。以前は、「糖尿病の患者さんはHbA1cが高いのが良くないから正常域(HbA1c 5~6%)まで何とかして下げよう」、とさまざまな薬剤を使って下げようと努力していました。しかし、2008年に発表された大規模臨床試験では、血糖値を正常域まで下げた結果、死亡率が逆に1.22倍上がってしまったという結果が発表され、血糖値は下げるだけではなく適切な下げ方(低血糖を起こさないように下げる!)も求められるようになってきました。

持続血糖モニタリングについて

そのために有用な方法が持続血糖モニタリングです。従来の血糖測定では、血糖値が食事療法や運動療法によって上がったり下がったりすることを “点”で見ていましたが、持続血糖モニタリングでは“線”で見ることが出来るようになりました。例えば就寝時の低血糖や食後の高血糖などを、明確に把握できるようになったことが大事なポイントです。

持続血糖モニタリングについて

この方は、食後に高血糖になっています。血糖値の正常値は80~140mg/dlなので、黄色い部分は食後の高血糖を示しています。特に夕食後は食事が多かったこともあり明け方まで高血糖が続いているのが分かるかと思います。

持続血糖モニタリングというシステムは2008年に出てきました。当時は器械を有線でお腹に付け、3日間の血糖値を持続的に測定できるものでした。それが2010年になって無線となり、器械をお腹につけて6日間の血糖値を把握できるようになりました。そして2016年に『Freestyleリブレ』という器械が発売され、2週間という長い期間の血糖値の変動を測定することができるようになり、糖尿病の治療が劇的に良質なものに変化しました。

劇的に変化した点をあげると、まず①この器械により血糖値の上下運動が明確に把握できることなったこと、②夜間の低血糖やその他の低血糖を明確に把握できることになったこと、③血糖値は十人十色と、全員異なりますので、その人の血糖値に合った薬剤を選択できるようになったこと、④食事の内容、食事の順番(海藻類を先に食べたほうがいい、など)でどのように血糖値が上がるのか分かるようになったこと、などたくさんあります。現在の糖尿病診療においては、この器械なしに良質な血糖管理は不可能と言ってもいいかもしれません。

現在、当院で導入しているのはアボット社の『Freestyleリブレ』という持続血糖測定のシステムです。この中で現在の医療保険制度で認められているのは『FreestyleリブレPro』という製品で、専用のセンサーを体に2週間装着することにより、その期間の血糖変動を線で確認することができます。当院ではその血糖値の推移を見ることによって、飲んでいただく薬剤や注射の選択、運動療法や食事療法の成果の確認や、今後の治療の進め方を考えるようにしています。

持続血糖モニタリングについて

持続血糖測定による治療を保険で受けていただくには、受診する医療機関が施設基準を満たしている必要があります。具体的には糖尿病の専門的治療をしている施設であること、かつ後述するインスリンポンプ治療を実施している施設のみが提供できる治療方法となりますので、全国でも比較的使える医療機関は限定されているのが現状です。当院はこの施設基準を満たしていますので、FreestyleリブレProを使うことにより、より正確かつ患者さんそれぞれの生活の実態に即した血糖の管理が可能です。
(参考HP:糖尿病ネットワーク

お腹につけたセンサーからBluetoothでスマートフォンに血糖値を表示(メドトロニック社パンフレットより引用改定)お腹につけたセンサーからBluetoothでスマートフォンに血糖値を表示(メドトロニック社パンフレットより引用改定)

またお手持ちのスマートフォンと連動して血糖値を評価する『ガーディアンコネクト』という器械が2019年に新しく認可されました。この器械はスマートフォンとBluetoothで連動し、今現在の血糖値をご本人のスマートフォンで把握することができます。特に優れた点は、ご家族様もそのデータを共有することができることです。そのため、高齢の患者さんが低血糖となりそうな状況をご家族の方が察知して予防線を張ったり、極端な高血糖傾向がある時にインスリンを注射したりするなど、日々の生活の中における過剰な高血糖や低血糖を予防する血糖管理が可能になります。

持続血糖測定器による
治療のタイミング

当院で持続血糖測定器を用いた治療は、主に以下の2つの場合に行います。

①一つ目は、患者さんに合ったお薬を選択するためです。患者さんごとに血糖変動は異なります。一日の中で血糖値が高いのが午前中なのか、午後なのか、夜なのかなどを把握することで、どのタイミングでお薬を飲んでいただくのがいいのか適切に判断することができます。当院では、最初の数日の血糖変動のデータをもとに、1~2種類のお薬を選び、次の1週間で血糖値がどのように改善されたのか、を、グラフにしてご覧いただいています。

持続血糖測定器による治療のタイミング

健診で高血糖を指摘され来院、HbA1cは7.9%とかなりの高血糖状態でした。A剤を内服したところ140mg/dlを超える黄色い部分が少し改善しました。しかしもう一息だったので、1月22日からB剤を追加したところ、黄色い部分が著明に消失したのが分かります。

②二つ目はHbA1cが6.5%、お薬を飲んで6%を下回ってくるような場合です。このような時には平均血糖値は110~120 mg/dl前後となりますので、食後の高血糖のみならず就寝中の低血糖が起きてくる数値となってきます。治療によって順調に血糖値が下がり、改善してきた暁に今後低血糖が出そうなリスクをはらんでいる期間に改めて器械を装着することで、低血糖が起こらないようなコントロールをするようにしています。

持続血糖測定器による治療のタイミング

HbA1cは6.5%と良好ですが、C剤という強いお薬を高容量(3錠)内服している患者さん。初めの1週間(1月31日~2月6日)は、食後の高血糖(140mg/dlを超える黄色い部分)や寝ている時間の低血糖(80mg/dl以下の赤い部分)が起こっています。そのため、薬剤を調整したところ、後半の1週間(2月7日~13日)は食後の高血糖や寝ている時間の低血糖がなくなったのが分かります。

低血糖になってしまうと“ふらつき”や“めまい”を起こし、その結果転倒や骨折、最悪の場合にはそのまま寝たきりになってしまうこともあり得ますので、糖尿病の治療では低血糖を起こさないようなコントロールをすることが極めて重要です。そして低血糖の頻度が高くなると認知症の発症率も上がってしまうことも分かっています。

また血糖値の推移が線で確認できることから食後の高血糖である「血糖値スパイク」という血糖値の極端な上昇が著明に分かりますので、患者さんご自身にとっても「食事の内容を見直そう」「食事の順番をコントロールしよう」「食後の運動療法に取り組もう」といった意識を持っていただきやすく、治療に前向きに取り組んでいただけるようになります。そういった患者さんご自身に治療の重要性を認識していただくために用いることも良くあります。

血糖値スパイク
についてはこちら

持続血糖測定器による治療のタイミング

お薬などは飲んでいない、軽症の糖尿病の女性ですが、お野菜を「先に」食べることで食後の高血糖である「血糖値スパイク」がなくなったのが分かります。高血糖の黄色い部分がなくなっているのが分かるかと思います。つまり、「食事の順番をコントロールする」ことは血糖値を上げないようにするために非常に重要です。

持続血糖モニタリング治療の
費用について

当院では持続血糖モニタリングによる治療を保険診療でお受けいただくことができます。患者さんの自己負担額としては、1割負担の方ですと約1,400円、3割負担の方ですと約4,200円前後となります。

インスリンポンプについて

インスリンポンプ
(メドトロニック社パンフレットより引用)インスリンポンプ
(メドトロニック社パンフレットより引用)

インスリンポンプ療法とは専用の小型の器械を用いることで、持続的に皮下にインスリン注射を注入する治療法のことです。適応となるのは、ご自身のインスリンを出すことができない1型糖尿病の方、もしくは特に治療の難しい2型糖尿病の方、そして妊娠中の方が挙げられます。

この治療法を実施する頻度が最も高いのは、1型糖尿病です。1型糖尿病はインスリンが不足しているため、インスリン強化療法という1日に4回・2種類の注射を打つ治療が必要になります。それでもコントロールが難しい場合には1日に5回注射をしたり、お薬を調整して血糖値をコントロールをします。ただそれでも上手くコントロールができずに高血糖や低血糖を繰り返しているような方にはインスリンポンプ療法は非常に良い適応になります。

血糖値というのは低すぎると低血糖症状に伴い意識を失うこともありますし、逆に高血糖になるとひどい時には「糖尿病性ケトアシドーシス(急速な脱水による昏睡・意識障害など)」を引き起こします。1型糖尿病の方はたった数回インスリンが切れただけでもそういった生命の危機を伴うことがあるため、「日常生活において何らかのタイミングでインスリンが注射できない」ということを防ぎ、持続的に血糖値の状態を安定させるための治療方法がインスリンポンプ療法です。毎回注射を打たなくてもよい、というメリットはありますが、24時間専用の器械が体に装着されている、というデメリットがあります。しかしインスリン強化療法に比べて低血糖を比較的コントロールしやすい治療方法となりますので、メリットの方が大きいと考えています。

またもう一つのデメリットとして費用が高い、ということがあります。インスリンポンプの器械レンタル料や、インスリンのお薬の量が患者さんによって多くなったりすることにより、一般的には1割負担の方で5,000円~6,000円前後、3割負担の方で15,000~20,000円の自己負担額となることが多くあります。これは通常のインスリン治療の方と比べて、1.5倍~2倍程度のコスト負担となってしまいます。しかし非常に高い治療成果が期待できますので、当院では血糖値のコントロールが難しく、特にリスクの高い患者さんにはインスリンポンプ療法による治療を取り入れています。

SAP療法について

SAP(Sensor Augmented Pump)療法。
左のセンサーから、右のインスリンポンプに血糖値を送り、そのデータをもとに血糖管理を行う。
(メドトロニック社パンフレットより引用)SAP(Sensor Augmented Pump)療法。
左のセンサーから、右のインスリンポンプに血糖値を送り、そのデータをもとに血糖管理を行う。
(メドトロニック社パンフレットより引用)

インスリンポンプを使った最新の治療として、「SAP療法」と言う治療方法があります。これはインスリンポンプをつけながら、そのすぐ横に持続血糖測定器をつけて“今現在”の治療をオンタイムで表記し、血糖値がある一定以下になりかけていきたらインスリンを自動的に止めることができる治療法です。こういった器械が出てきたことにより、低血糖になってしまって意識を失ってしまう、などといった状態を回避することができます。昨今自動車を運転中に治療中の方が低血糖になってしまって交通事故を起こしてしまうことが問題となっていますが、そういったことも予防することができるようになっていますし、逆の高血糖すぎる場合にアラームを鳴らすこともできます。このように器械や治療方法は日々進化を続けていますので、糖尿病治療の選択の幅はますます広がってきていると言えます。

当院での診療実績:
糖尿病診療にまつわる療養指導

療養指導を行い予防に努めることで、QOL(生活の質)の維持につながります。

2017
年度
2018
年度
2019
年度
2020
年度
2021
年度
2022
年度
フットケア件数 88 61 61 94 219 255
在宅療養指導件数
(SMBG+注射)
44 91 106 190 162 151

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