糖尿病性腎臓病
(糖尿病性腎症)

糖尿病性腎臓病
(糖尿病性腎症)とは

糖尿病性腎臓病(糖尿病性腎症)とは糖尿病では様々な合併症(ほぼ、全身と言っても過言ではない)をきたしますが、その中でも腎臓への障害は古くから指摘されています。
特徴として、以下のことが挙げられます。

  • 糖尿病歴が長いほど発症・進行しやすい
  • 血糖コントロールが悪い程発症・進行しやすい
  • 初期は通常の尿検査では見つかりにくい
    (後にも記載しますが、尿アルブミンの測定が必要です)

なお、腎症が進行すると最終的には透析治療や腎移植治療をはじめとした腎代替療法を要する状態になりますが、現在、日本における透析患者で最も多いのは、糖尿病性腎臓病によるものです。

糖尿病性腎臓病の診断と病期

慢性腎臓病(CKD)とも重複しますが、一般的には血液検査(クレアチニン・eGFR)と尿検査(尿アルブミン、または蛋白)の2つから判断します。状態によって、1期から5期まで分類されますが、表には5期がありません。と、いうのも“5期”というのは、透析治療に移行した状態だからです。

原疾患 蛋白尿区分 A1 A2 A3
糖尿病 尿アルブミン定量
(mg/日)
尿アルブミン/Cr比
(mg/gCr)
正常 微量アルブミン尿 顕性アルブミン尿
30未満 30~299 300以上
高血圧
腎炎
多発性嚢胞腎
移植腎
不明 その他
尿蛋白定量
(g/日)
尿蛋白/Cr比
(g/gCr)
正常 軽度タンパク尿 高度タンパク尿
0.15未満 0.15~0.49 0.50以上
GFR区分
(ml/分/1.73m2)
G1 正常または
高値
≧90
G2 正常または
軽度低下
60~89 腎症 腎症 腎症
G3a 軽度~
中等度低下
45~59 1期 2期 3期
G3b 中等度~
高度低下
30~44

G4 高度低下 15~29 腎症
G5 末期腎不全
(ESKD)
<15 4期

出典:日本腎臓学会編「CKD診療ガイド2012」を一部改変

さらに、他の糖尿病合併症と同様に、自覚症状に乏しいのが厄介な点です。倦怠感やむくみが出る段階では、すでに進行(だいたい、4期あたりになっている)しているうえに、自覚症状が出る段階になると、改善が困難なことが多いので、健康診断や定期検査での早期発見が重要です。

糖尿病性腎臓病の治療

実は、“糖尿病性腎症に特化した治療”というのは、今のところありません。
“腎臓”というフィルターを守るために、いかに負担をかけないか?が大切です。
そのためにも、血糖コントロール、血圧コントロールが重要になってきます。
具体的には、(以下に示した治療基準は目安であり、患者さん個々の病態によっても異なります!気になる方は主治医とも十分相談してください)

血糖コントロール

HbA1c 7.0(6.5~8.0)%未満
(低血糖を起こさない・腎機能を考慮した薬・インスリンの調整が必要です)

血圧
コントロール
血圧(診察室)130/80未満
(複数の降圧剤が必要になることもしばしばです)
血圧
コントロール
血圧(診察室)130/80未満
(複数の降圧剤が必要になることもしばしばです)
食事療法 塩分 6g以下
(カリウム・タンパク制限が加わることもあります)
運動療法 中等度以上の身体活動を週150分以上

と、いったことがあげられます。

参考文献:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2018
Kidney International (2020) 98, 839–848

糖尿病性腎臓病を予防するために

繰り返しになりますが、糖尿病性腎臓病の予防・進行阻止には、他の合併症と同様に適切な血糖コントロール、血圧コントロールが必要であり、そのためにも持続可能な食事・運動療法、薬物療法、定期的なフォロー(診察・検査)が肝心です。もし、気になる方はかかりつけの先生までご相談ください。

【執筆者】
医療法人糖心会べっぷ内科クリニック
理事長 別府浩毅

【執筆者】医療法人糖心会べっぷ内科クリニック
理事長 別府浩毅

専門資格

日本内科学会 認定内科医・総合内科専門医
日本糖尿病学会 糖尿病専門医
日本糖尿病・妊娠学会
日本糖尿病協会 療養指導医
日本循環器学会 循環器専門医
心臓リハビリテーション学会 心リハ指導士
日本腎臓学会
日本透析医学会 透析専門医

所属学会

日本内科学会
日本糖尿病学会
日本糖尿病・妊娠学会
日本糖尿病協会
日本循環器学会
心臓リハビリテーション学会
日本透析医学会

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